基礎講義:体幹の基礎(解剖・機能・神経)
辻村外科病院
理学療法士 板谷敬晴先生
応用講義:姿勢制御における体幹の役割 -臨床推論とアプローチ-
刈田豊田総合病院
理学療法士 小松洋介先生
片麻痺や腰部・下肢運動器疾患患者では非対称で努力的な座位・立位姿勢をとる場面を多く目にします。患者によっては座位保持すら難しい患者や歩行時にふらつきが多く、自己にて体幹の抗重力伸展保持が不可能な患者が存在します。
体幹の筋力・可動域などの機能的な評価・アプローチだけで治療効果が出ないことは少なくありません。それはその機能が行為においてどんな役割を果たすべきか、を考えていないことが多いのではないかと思います。体幹の筋力や可動性を見て、それを改善することが姿勢制御にそのまま結び付くとは限りません。
体幹は様々な日常生活動作において、頭部・四肢を自由に操るための基盤となります。目的となる行為を達成するための姿勢制御を行っています。そのためには姿勢保持と(物へのリーチなど)四肢による目的動作の達成、という二重課題を行っています。つまり体幹へのアプローチは機能面だけでなく注意機構など認知面も考慮したアプローチが必要となります。
第5回目の定期講演は、参加申し込み開始日に定員に達するという、本テーマへの関心のつよさや講師の先生方、ASRIN勉強会への期待の大きさを感じました。
基礎講座では“体幹が働くとは?”をテーマに「体幹の基礎」を辻村外科病院 理学療法士 板谷敬晴氏にご講演いただきました。体幹が果たすべき役割を生体力学、大脳生理学等さまざまな視点からお話しいただきました。
応用講座では“体幹の役割、患者様の心理を知り・感じ・理解する”をテーマに「姿勢制御における体幹の役割~臨床推論とアプローチ~」を刈谷豊田総合病院 理学療法士 小松洋介氏にご講演いただきました。臨床像・病態解釈等とても想像しやすく理解につながるお話しに続き、1時間以上にわたる姿勢制御の疑似体験の実技では“患者様の思いに気づいてほしい”という小松先生の熱い思いを感じました。臨床で患者様に伝える言葉や感じ方の誘導・介入について、講師の先生方の患者様との対話や反応をとても大切にしている姿勢やその感性、自らの言葉や手で伝える姿からも伺うことができました。受講者の皆様には知識とともに感性を養う機会となり、臨床での患者様との関わりに役立つ勉強会になっていただければ幸いと思います。