本セミナーは、嚥下障害、顔面神経麻痺のリハビリテーションに従事する言語聴覚士(ST)を対象に、作業療法士の視点から「0か100ではなく0.1の変化がわかる」触診技術と、エビデンスに基づいた臨床アプローチを伝達することを目的とします。

午前の部:表情筋へのアプローチと顔面神経麻痺の考え方
午後の部:下顎・舌骨周囲へのアプローチ
この二部構成にして、1日でのセミナーとして対応いたします
セミナーの目的:皮筋の特徴を活かした繊細なアプローチ
触診の基礎理論:指の使い方、圧の加え方、組織の捉え方
10:00 - 11:00:表情筋の解剖と骨の触診
基礎となる骨格の触診(前頭骨、上顎骨、頬骨、下顎骨、各縫合)
主要な表情筋の触診と起始・停止:
前頭筋、眼輪筋、皺眉筋、笑筋、大・小頬骨筋、口輪筋、口角下制筋、オトガイ筋
11:00 - 12:00:表情筋の調整と実技
安静時評価(左右バランス)と動作時評価
隣接筋を固定した個別的ストレッチ(皮筋の特性)
12:00 - 12:30:顔面神経麻痺の臨床応用
急性期:強力・粗大な随意運動の回避と徹底した伸張マッサージ
慢性期:個別的筋力強化と分離運動の練習
リスク管理:低周波・電気刺激が後遺症を悪化させる可能性について
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下顎骨の構成(下顎角、筋突記、関節突起、下顎切痕)の触診
顎関節の複合運動(回転運動と並進運動)の理解
開口障害の分析:滑り運動(並進)が障害されていないか?
14:30 - 15:30:舌骨周囲筋と姿勢の関係
舌骨・甲状軟骨・輪状軟骨の触診
舌骨上筋群(嚥下時の挙上)と下筋群(固定作用)の相互作用
不良姿勢(頭部前方突出)が舌骨の張力バランスを崩すメカニズム
15:30 - 16:30:ST臨床に活かす筋力強化の実技
シャキア訓練の再考:単なる「腹筋運動」にしないための解剖学的配慮
実技:シャキア法・嚥下おでこ体操の正しい負荷設定と触知
内側・外側翼突筋、咬筋、側頭筋へのアプローチ(参考)
16:30 - 17:00:総括・質疑応答
1日のまとめ:触診から始まる臨床推論
明日の臨床から変えられるポイントの確認
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1. 触診の質と表情筋アプローチ(午前)
正確な触診:0か100ではなく、0.1の組織の変化を感じ取る指の感覚を養う。
表情筋は非常に繊細であり、健常者で効果が実感できない手技は患者さんには通用しない。
病的共同運動を抑制するため、「神経再生を抑制する(迷入再生を防ぐ)」という視点を持つ。
2. 顎関節と開口の分析(午後)
「少しは開くが大きく開かない」症例に対し、回転運動だけでなく滑り運動(並進)へのアプローチが必要であることを理解する。
円背や姿勢の問題を「腰椎から頭頸部までの姿勢分析」として捉える。
3. シャキア法の質(午後)
舌骨下筋が舌骨を下に固定できているかを確認しながら、効率的な喉頭挙上を引き出す。
血圧・脈拍が前後で20以上上昇しない範囲での適切な難易度設定を行う。
4. 療法士としてのマインドセット
評価や施術の根拠を、解剖学的指標を用いて患者さんに説明できるようにする。